カナリア鳴く空
それをたとえるとするなら、“毒”だ。

中毒症状と言う意味の、“毒”。

優衣と過ごす時間は、もはや中毒なのだ。

1日でもその時間を怠ってしまうと、禁断症状が出る。

「――はっ…誠司、さん……」

熱があるのかと言いたくなるくらいの潤んだ目。

吐息の合間を縫うように私の名を呼ぶ甘い声。

細い躰。

豊満な胸。

「――優衣…!」

「――あっ…!」

果てた優衣が、私にもたれかかるように倒れてきた。

それすらも私には毒で、優衣を抱き寄せる。
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