カナリア鳴く空
当日。

私は朝の5時に出た。

まだ誰も走っていない朝の高速道路を、車を飛ばす。

頭の中で鮮やかなまでに浮かぶのは、優衣との情事。

今日も優衣の思うままだった。

彼女に見下ろされる私は、彼女のされるまま。

少しでも他のことを考えさせないと言うように、私に集中する。

「――優衣…」

彼女は、もう目覚めただろうか。

出かける前、私は優衣を彼女の自室に運んだ。

もし朝香が帰ってきた時、私たちの寝室に優衣がいたらきっとおかしがると思ったから。

そもそも、朝香が帰ってくるのかすらもよくわからないけど。
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