カナリア鳴く空
「今年はどうだ?

期待できそうな新人が集まっているか?」

佐々木と肩を並んで廊下を歩きながら私は聞く。

「はい、大変な粒ぞろいでございます。

君塚さんのお気に召す方もいられると思います」

そう言った佐々木に、
「ほお、それは楽しみだ」

返事をしたとたん、優衣につけられた首筋の跡がうずいた。

思わず首筋に手を当てる。

「どうか、されました?」

私の様子に、佐々木が首を傾げた。

「いや、虫がいたみたいなんだ。

そんな、たいしたことじゃないけど」

首を横に振りながら答え、私は笑ってみせた。
< 92 / 209 >

この作品をシェア

pagetop