カナリア鳴く空
頭の中で鮮やかなまでに浮かぶ、優衣との情事。

彼女の支配下に置かれた私は、どうすることもできない。

――誠司さん…

吐息の合間を縫うように、私を呼ぶ声が頭の中を離れない。

私を見つめる優衣の濡れたような瞳。

楽器のように反応する優衣の躰。

豊満な優衣の胸。

そのどれもが私にとっては全て毒で、頭と躰を離れない。

また早いスピードで、毒が回る。

「――…さん!

…塚さん!

君塚さん!」

佐々木の声にハッとなると、目の前にはドアがあった。
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