カナリア鳴く空
「どうかされましたか?」

「いえ、何でも」

心配して聞いてきた彼に、首を横に振って言葉を返した。

「そう言えば君塚さん、その後はどうですか?

奥様との生活は」

大森さんの質問に、
「――えっ?

そうですね、順調ですね」

いきなりそんな話を振られたものだから、慌ててしまった。

私はちゃんと大森さんの質問に答えられていただろうか?

「いいですね、新婚と言うものは。

アタシも早く結婚したいものです」

楽しそうな彼に、本当のことを言える訳がないと思った。
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