レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「流石だ」
数時間かかって清書したそれを、深谷さんに恐る恐る提出すると、そんな言葉をもらえて、飛び上がるほどうれしくなる。
きっと未熟に違いない。今までの私の仕事とは質が違うから。
けれど、できる限りのことはしたつもりだったので、彼の言葉を素直によろこんだ。
「ありがとう」と言われたことはあっても、その作業を褒められたことなんて、一度だってなかった。
こんな私にだって、すこしは貢献できるって、そう思えて。
そのあと、渡された彼のスケジュールに驚いて声も出ない。
今日は比較的空いていたものの、分刻みの日もある。そして、秘書もなしにそれをすべて自分でこなしてきた彼を、本当にすごい人だとそう思った。
「こんなに……」
「だから、このお茶が必要なんだよ」
ニッコリ笑いながらお茶を口にする彼に、やっぱり心が温まるのを感じていた。