レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「片桐は、もう上がっていいから」
鞄を手にした彼が、立ち上がってそう言う。
確か、今日は……。
「接待に、君を付き合わせるつもりはないから」
時計をチラッと見ながらそう言う彼は、私の傍まで来て、メガネをはずして、耳元でささやく。
「俺の部屋にいてもいいぞ?」
一瞬にして、プライベートの顔に代わった彼の言葉に、私は首を振った。
「ありがとうございます。でも、私、頑張りたいんです」
こんな気持ちにさせてくれたのは、彼。
昨日の事か怖くないわけじゃない。
だけど、やっぱり乗り越えないといけないんだと、強く思ったから。
そして、今の自分になら、もしかしたらできるんじゃないかって。
それはきっと、彼がくれた自信のおかげだ。
「そうか。だけど、約束だ。何かあったら、ためらわずに電話すること」
そんな優しい言葉に、思わず泣きそうになりながら、彼の背中を見送った。