レッスン ~甘い恋の手ほどき~


前の会社では、私の代わりはいくらでもいるんだと思っていた。


実際、回ってくるのは誰でもできる雑務だけ。私でなければというような仕事は、一つもなかった気がする。

時々、営業が忙しいときに回ってくる資料づくりだけが、唯一まともな仕事だった。


だけど、それを自分なりに一生懸命やったおかげで、今、悠人さんと一緒にいる――。



「そろそろ、寝ろ。寝付くまでいてやるから」



彼に言われて気がついた。

ずっと、荒立っていた心の奥の方も、穏やかになっていて、眠れそうな気がする。



ゆっくり頭を撫でてくれる彼の手も、私の眠気を誘って……。

いつの間にか、意識を手放していた。




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