レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「シャワー、使いますか?」
「あっ、着替えもないし、一度部屋に戻るよ。
華帆……一人で泣くくらいなら、俺を頼れ。惚れた女の一人くらい、何とかしてやる」
そう差し出されたのは、彼の部屋の合鍵。
思わず私が彼を見上げると、すこぶる真剣な顔をした彼が、もう一度口を開く。
「もう、お前を泣かせたくない。辛いときは遠慮なく来い」
彼と出会ってから、私は泣いてばかりだ。
あの日――思わず公園で、彼に電話をしてしまったあの時も、勝手にわんわん泣いてしまったし、それからも、何度も何度も。
けれど、それを嫌がることなく、受け止めてくれようとしてくれる彼が、少しずつ私に勇気を与えてくれる。
「ほら、華帆が持っていて」
その鍵を、受け取ることができないでいると、私の手を広げさせて、その上に置いた。
私が彼を見上げると、小さく頷くのが分かって、彼にもらったその鍵を、ギュッと握りしめる。
「それじゃ、後でな」
後で……。
またすぐ、彼に会える。
それだけで、安らかな気持ちになれるのは何故だろう。