レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「はい」
そこには、メガネをかけた彼が、経済新聞に目を落としていた。
「おはようございます。あの、お茶を……」
その雰囲気は、近寄りがたいような、凛とした空気を醸し出していて。
だけど、私の声に気がついた彼は、メガネを取って微笑んでくれた。
「なんだ。野郎かと思った。片桐か」
そんな言い方が、ビシッとスーツを着こなした彼には似合わなくて、思わず笑ってしまう。
そして、私の前で見せてくれる彼の素顔は、私に安らぎをもたらすんだ。
「ありがと。あっ、今日のスケジュール、ちょっとタイトだけど、よろしくな。本社の人間が何人か来て会議がある。ちょっとサポートを頼む」
「はい」
「それと、午後からは……」
メガネをかけなおして、完全に仕事モードの彼は、矢継ぎ早に私に指示を出す。