レッスン ~甘い恋の手ほどき~
一通りそれが終わって、下がろうとしたとき、ギュッと手首をつかまれて、ひどく驚く。
「華帆――顔色が悪い。大丈夫か?」
突然、柔らかくなった彼が、私の顔を覗き込んでそう言う。その真剣な眼差しに、一瞬目が泳いでしまう。
「は、はい」
電車でのことを思い出して、はっきりと返事を返せなかった私。「大丈夫」って言うべきなのに、彼に見透かされている気がして。
「今朝、言ったこと覚えてるか?」
「えっ……」
「一人で泣くくらいなら、俺を頼れ」
彼がもう一度、私の耳元でそう言ってくれたとき、全身に鳥肌が立ってしまった。
一人で泣くくらいなら……。