レッスン ~甘い恋の手ほどき~
テーブルに置かれてあるメニューには、ベーグルやら、ホットサンドや、パスタばかりなのに……。
「気にするな。俺もいつも食べてるから。味は保証する」
気にするなって、作るのはマスターなのに。彼の言葉がちょっとおかしくて、なんだか緊張が緩んだ。
程なくして運ばれてきたアツアツのそれは、本当においしくて。ふぅふぅ言いながら、それでも夢中になって食べていると、彼の視線を感じた。
「食えてよかった」
ニッコリ笑いながら、そう漏らす彼にドキッとする。
朝、あんなに不安だったのに、今はこんなにも落ち着いていて。この人は魔法使いかなんかじゃないかって、思えるほどだ。
「ごちそうさまでした」
自分でも驚くほど食べることができて、悠人さんに促されて席を立つ。レジの前でマスターが、私を待ち構えていたように口を開いた。
「もう、口説かれちゃったの?」
「えっ?」
「あの人見てれば分かるから。片桐さんのこと、そう思ってるのが」
私の後ろに立った深谷さんが、はぁっとため息をはいて、マスターをにらむ。
「その口が減れば、最高なのにな」
そんなこと言いながら、私の分まで支払いを済ませてくれた。