レッスン ～甘い恋の手ほどき～

そして、完全に仕事モードの彼は、机の上にいっぱいになっていた書類にあっという間に目を通して、パソコンを立ち上げる。

もう、私のことなんて眼中にないようで、少し寂しく思ってしまう。


「片桐」

「はいっ」

「山中のフォローに入ってくれるか? ちょっと一人ではきついかもしれない」


彼は見ていないようで、すべてを把握していて、瞬時に様々なことを見極める。
この決断力と、行動力に、部のすべての人が魅了されているんだ。
そして、私も……。いつも近くで見守ってくれる彼がいて、充実した生活ができるんだとそう思う。



だけど……。

「華帆ちゃん、深谷さん大丈夫だったの?」

「えっ……えっと……」

一緒に資料をまとめ始めた山中さんが、ふとそんなことを漏らす。昨日の一部始終を知っている皆が、そう心配するのは当然で。


「会社を追い出されるかもしれないけど、それでもいいか?」


西川さんとの縁談を断ったと言う彼が、そんなことを口にしたのを思い出して……。