レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「だけどさ、何で深谷さんが犠牲にならなくちゃいけないんだよ。
俺たちが頑張って、あっちから、合併してくださいって頭を下げられるくらいに成長させればいいだろ? どうしてもあそことって思わせるような会社にすればいいだけのことだ。
そういう家に生まれついたからなんて言うやつもいるけどさ、ここの室長職だって、親の七光りってわけじゃない。
それは俺たちが一番よく知ってる」
タバコを手にしていた山中さんは、少し怒ったようにそれを灰皿に押し付けて、眉間にしわを寄せた。
そう。
悠人さんは、これだけの信頼がある人。
彼は、飾り物なんかじゃない。
ここに、いなくてはならない人なんだ。