レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「失礼します」
「あっ……」
突然、アポなしで現れたのは西川さんだった。
髪を振り乱して働く私とは対照的に、きちんとメイクもされて、やっぱりふわふわに巻かれた髪が綺麗で……。
どう見たって、深谷さんの隣は、この人がふさわしいと思うような気品もあって……。
「深谷さん、いらっしゃいます?」
チッ
小さく舌打ちをしたのは、山中さん。部内に響き渡っていたキーボードをたたく音が、一瞬途切れる。
加藤さんが一瞬、私のところに来ようとしたけれど、小さく首を振ってそれを止めた。これは、私の仕事だから。
いつもするように、室長室に行って悠人さんに来客を告げると、少し困った顔をして通すように言われる。
西川さんを室長室にお通しした後、一礼して部屋を後にした私は、ドキドキする鼓動を感じながら、お茶を入れた。
彼は断ったと言っていた。なのに、どうして……。