レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「危ない。俺がやる」
動揺して、割れてしまった湯呑みに何も考えずに触れた私は、指を少し切ってしまったようだ。じわじわ滲み出す真っ赤な血が、ボタッと床にこぼれ落ちて行った。
お盆にその欠片を手際よく集めた後、私の手を取った彼は、滲む血を見て、迷うことなくそれを口に含む。
「えっ……」
「大丈夫か?」
そんな優しい言葉をかけられたら、泣いてしまいそうだ。
「――はい」
けれど、泣いてはいけない。ここでは、ただの秘書。
思わず手を引っ込めて、うつむくと、彼がゆっくり立たせてくれた。
「入れ直して……」
そう言おうとした私の言葉を遮ったのは、彼の唇だった。