レッスン ~甘い恋の手ほどき~

「すいません」


慌てて彼から離れて、俯いたまま割れた湯呑を片付けに行く。


“こうしたいのは、こいつだけ”


そう言ってくれた彼。
こんな私に、そんな大切な言葉をくれた。

彼と西川さんのキスばかりがチラついて、怒りや嫉妬がこみ上げてきたのは事実だけれど、彼が私にくれた言葉は、とても重い。あんなことをしなくたってよかったかもしれないのに、きっと彼は……私のために、あの場でキスを――。



だけど、西川さんを怒らせてしまったら、彼は?
彼女に悠人さんを取られたくないって、そう思ったけれど、彼はどうなってしまうんだろう。

私は、いつも自分の気持ちばかり。
なりふり構わず、私のために奔走してくれる彼とは、大違いなんだ。



給湯室で、ただ溜息をつく。
自分の未熟さに、少し嫌気がさしてしまう。







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