レッスン ~甘い恋の手ほどき~
最終レッスン
「今日は、お早いですね」
「あぁ」
マンションのコンシェルジュの前でも、私の手を離そうとしない。
ずっと何も話さない彼が、少し苛立っているように見えて……。
部屋に入った瞬間、痛いほど抱きしめられる。
「華帆……」
切なげな声を絞り出すように、そう言う彼は、少し震えているようにも感じる。
「華帆が、好きだ」
それは、彼の叫びのようにも聞こえて。
家を背負った彼の――。
「好き、なんだ」
それに逆らう事の痛みも、全部全部、一人で抱えているんだ。
私の些細な悩みなんて、足下にも及ばないほど。