レッスン ~甘い恋の手ほどき~
私は、彼が買ってくれたピアスに、そっと触れてから口を開いた。
「そんな約束、彼に必要ですか?」
「はっ?」
「彼は、自力でもぎ取る人です」
家柄って大切かもしれないけれど、彼はそれだけじゃないって、近くで仕事をしていてよく分かったから。
彼が築いてきたこの営業企画部の成績も、その他の分室すべての部を纏め上げている、室長としての力量も、誰もが認めるほど素晴らしい。
誰も、社長の息子だからなんて言う人はいない。
「話にならないわ。社会ってものが、分かってらっしゃらないわね」
大きなため息をついて、ソファーに深く座り直す彼女。
自信満々な彼女に、綺麗ごとなんて言ったって仕方ない。
頭の片隅に、悠人さんの笑顔を思い浮かべながら、私は一歩前に出た。