レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「片桐、何してる?」
その冷たく突き刺さるような声に、体をビクッと震わせる。
「あのっ、すいません」
そこにいたのは、修二さん。
彼は素早く駆け寄ると、私を一瞥する。そして、私と同じように資料をかき集める彼に、慌てて言葉を発した。
「深谷(ふかや)様、申し訳ありません。
ここは大丈夫ですから、こちらへ」
けれど、修二さんがそう促しても、彼は資料を集める手を止めない。
「ぶつかったのは、私の方です。彼女を責めないでください」
そう言ってニッコリ笑ったその人は、集めた資料をきちんと揃えて、私の手に乗せてくれる。
修二さんの険しい顔とは対照的に、その優しい笑顔が、本当に大丈夫と言ってくれている気がして、胸をなでおろした。