レッスン ~甘い恋の手ほどき~
どっち?
地下鉄?
そう思った私が、最寄りの駅の方向へ走りだそうとした、その時……。
「片桐さん?」
その声に振り向くと、探していたその人の顔が。
「はぁ、よかった。あっ」
得意先のお客様だと言うのに、そんな風に言ってしまって、思わず手で口を押える。
「ははっ、そんなに急いでどうしたんですか?」
「あのっ、これ」
急いでいて、ギュッと握り締めてしまっていた、それのしわを伸ばすようにして差し出すと、深谷さんは目を丸くした。
「これを俺に?」
メガネをはずして、仕事モードの解けている彼が、俺というのを聞いて、少し驚く。