レッスン ~甘い恋の手ほどき~
そんなことを考えながら、項垂れていると、再び彼の声が聞こえてきた。
「俺と――本当の恋をしませんか?」
「えっ?」
「俺、実は、ずっとあなたのことを知っていました。
あなたの会社に行くたびに、何度もあなたが走り回っている姿を見かけました。
小さな体で、全力で仕事をしているって感じで、すごく好感が持てた。
お茶を出されるたびに、それがあなたの入れたものかどうか、分かるようになって……。
これじゃあ、まるでストーカーですけど」
クスッと笑った彼は、何かを思い出したように言葉をつなげる。
「どんなに忙しそうでも、いつも笑顔で。
きっと、表立って褒められるのは営業で、あなたはそうじゃなかったんだろうけど、それでも、会社のために奔走しているのがよく分かって。
だから、俺に「契約してくれてありがとうございます」なんて言ったとき、なんていうか……この子が欲しいって」
彼は、私の方に向きなおして、じっと瞳を覗き込む。