SCHUTZENGEL ~守護天使~
「勇介」

 聞き慣れた声に魔王の口元が微かに笑みを浮かべる。

 霊術士たちの顔にも安堵の表情がこぼれた。

 振り返る魔王の瞳に、相変わらず上品な物腰で歩み寄るデイトリアの姿が映った。

 キャステルの顔が待ちわびた友を見るように緩む。

「デイトリアス」

 信じてはいたが、それはこちらの勝手な都合だ。

 例え来なかったとしても、それを責められる者は誰一人としていない。

 安堵しながらも、自分たちのしたことに素直に喜ぶ事が出来ない。

 そんな感情を察してか、デイトリアは何も言わずキャステルの前に立つ。

「下がれ」

 キャステルはそれに指示を下すと、霊術士たちは一斉に魔王とデイトリアから距離を置いた。
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