SCHUTZENGEL ~守護天使~
 よく女が使う「相手を試す言動」ではなく、本当の別れを、その何度も口づけを交わした唇が語ったから。

 本心では、すがりつきたい気持ちだったと思う。

 でも、本当にそこまで愛しているのかと問われれば──きっと俺は答えられないだろう、八方塞がりだ。

 深い溜息が漏れる。

「失恋でもしたのかしら?」

 ふいに右の方から女の声が聞こえた。

 誰か座っていたっけ?

 振り向くと、三つ向こうの席に女が座っていた。

 その女を見た刹那、空気が張りつめる──goldenrod(ゴールデンロッド)の髪にダークブルーの瞳、しなやかな体はまさに美しかった。

 洗練された美しさにジャラジャラとした、けたたましい飾りはいらないと納得させるにふさわしい女性だ。

 こういう女性は男の下心など見透かしてしまうのだろう。
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