冷蔵庫の穴

16

瞳を閉じ、
ホースをくわえる。

無論ホースの反対側は
こちらの世界に置いておく。

『虚』

に頭を入れてみる。

徐々にヘルメットが沈んで行く、
境を越える時少しだけ
気圧が変化したのか、
軽い耳鳴りがした。

ホースにあたしの息使いが響く。

両手で冷蔵庫の角を掴み、

あたしの肩から上は

『虚』の向こう側に沈んだ。


恐る恐る瞼を開ける。


驚きのあまり

「んぼっ!」

と声が漏れた。



『虚』の向こう側そこはあたしの

アパートだった。

それも平面の!

レンジの回りの汚さや
パンやら煙草やらが
雑然と置いてある
サイドボードまで、

寸分違わぬ

まさしく

あたしん家だった。
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