副会長の秘密
「…うーん、なんで分かってくれないかなあ…」
頭を傾げながら、困った顔で言ってくる副会長。
分かるわけないでしょおおおおぉ。
そんなことっ。
と、ついキィっと涙目で睨みつける。
だけど次の言葉で、なんでこういう無理やりなやり取りを続けてきたのか腑に落ちた。
「…だって、ほら…水野ちゃんって俺の兄貴のこと好きなんでしょ?」
「………なっ!?」
「反応とか見てたらすぐ分かったよ?
というか、顔に書いてあるってぐらい分かりやす過ぎ」
自分では隠していた、つもりだった。
むしろ京甫先輩の関係のあることを言ってないからバレないと思っていたのに。
私が好きになってしまった人は、目の前にいる副会長の兄で。
1番知られてたくない京甫先輩に、
伝わるのはきっと時間の問題で。
バレる時は一瞬だ。
そうすれば…私は……、
私はもう…二度と。
意を決して、私は副会長にまっすぐ顔を向けると静かに目を伏せた。
「…そ、そのことは内緒にして…」
「ほしいよね??」
その言葉を待ってた、というように、またクスっと笑みを浮かべると、続けるように私の瞳を覗き込むように身体を屈めた。
「じゃあ、さっき言ったこと受け入れてほしいな♪
ついでに、兄貴ともっと仲良くなれるように俺が協力してあげるし、…『その厄介な事情』も治してあげる」
っ!!
待って、あの事までバレてるの!?
「…いい取り引きだと思わない?水野ちゃん」
そう言いながら、小指を持ってくる副会長。
「っ…な、何言って……というか、なんでそんなこと知っ…!?」
私が言い終える前に、わざとらしく、ひょいっと小指を持っていかれた。