副会長の秘密

「あははは…その、ごめん！怒ってるよな」

「…そりゃ、私だって怒るよ？
だって…最初の一口は卵焼きって決めてたのに……」

「………最初の一口？」

「そうだよ！私は好きなものを最初に食べる人なの…。それに、食べるなら…先に言ってくれれば普通にあげたのに」



仕切り直しに私は最後の一個になった卵焼きを口に頬張った。


そんな黙々と食べる私を見ながら、山瀬くんは一瞬驚いたような顔をした後、何故かよく分からないけど


隣でクスクスと笑いだした。



「…っ、そっかそっかっ、っふ、あはははは！なんか水野変わったなー！」

「…え、そんなことはないと思うけど……
っというか、なんでそんなに笑ってるのかな？山瀬くん」



お腹を抱えて笑うもんだから、山瀬くんをじっと睨む。



「いやー、水野に何があったのかよく分からないけどさ…
うん、良かったなーって思って？ほら、なんつーの？親心的な感じ？？」

「え…？山瀬くん言ってることがさっぱり分からないんだけど」



よく分からないことを言う山瀬くんに、ん？と顔をしかめて見るけど、山瀬くんは軽く流すだけで



「あはははは！まあ、水野は気にすんなっ！な？
」



笑いながら、さらっとかわされた。



いや…いくら私でも
そんな笑顔で『なっ？』って言われても………



「もうっ、ほんと…変な山瀬くん」



横目でよく分からないことを言う山瀬くんを見つめた後、食べ終わったお弁当を片付けた。



「あ！お弁当片付けるなら、ちょっと待って。
さっき水野の卵焼きを貰ったから、俺のもやるよ」



お弁当箱を包んでいた私の手を制止するようにそう言うと、


私の手から箸をひょいっと取り上げて、まだ手をつけてない自分のお弁当の中から卵焼きを掴むと、私の目の前まで持ってきた。



「…はいっ、口開けて」

「え、」

「いいから」



山瀬くんに言われた通りに口を開けると、「ほらっ」と言って卵焼きを食べさせてくれた。