片想
「薬師さん?」
え…?
氷室さんの声?
珍しい。
いつも自分だけが声を出すのが嫌だからってボードで話してたのに。
アタシはカバンから慌ててメモ用紙とペンを探す。
でもそんなアタシを彼女は制止する。
「来てくれてありがとう」
「ううん、
アタシも氷室さんのお祖母さんには元気もらったから」
そう答えてハッとする。
彼女、耳が…。
普通に会話するとつい忘れてしまう。
一瞬、
曇ったアタシの表情と対照的に彼女はふっと笑う。