片想
車内に乗り込むとモーター音は少し静かになる。
あーそうだ。
これ、
つけておかないとダメなんだった。
アタシは化粧ポーチに入れておいた社章を取り出す。
小さいものなのでなくすといけないからいつもここに入れている。
普段つけることなんてめったに…
いや、ないに等しいくらいだけど。
こうして社用で外に出るときは副長からもつけるよういつも言われている。
アタシはピンをスーツの襟のところに刺す。
「痛っ!」
針の部分が左手の人差し指に刺さり血がにじみ始める。
アタシはぼんやりとその指を見つめる。
このまま出血多量で…
なーんてね。