片想

…どうして。

こんなことに、
こんなことになってしまったんだろう。


宮垣くんをちらっと見る。

彼は水しぶきをあげて道路を走る車を無表情のまま見ている。


――雨の中。

車のライトや街の灯りに照らされ雨ににじんだ景色が幻想的。


まるで街が…、
泣いてるようだ。


「…ってことだから悪いけど…」

和水チーフの声。

「ちょっと今から行くところができてしまって…」

行くところ。

家族のだれか、
だろうか。

ぼんやりと思う。


「わかりました」

宮垣くんが返事する。

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