brain core
「……」
寒い。白い息も見えないほどだ。
その時、あたしの背中を誰かにおされた。
バランスを崩した時、足元は断崖絶壁だった。
「!?」
「飛びおりろ」
「!?」
後ろを見ると剣さんがいた。
「!?っ……つ、剣さん」
いつの間にか後ろに剣さんがいた。
剣さんはあたしの背中を押そうとする。
「ちょ……待っ……」
「勇気ないわけ?」
「!なに言って……こんな所……?」
風がふいてあたしの体を揺らした。
「!!?」
背中に剣さんの手の体温を感じる。
「剣さ……」
「飛び降りられへんの?」
「当たり前じゃないですか!?」
「へ~……これでも?」
「っ!!?」
剣さんはあたしの足を思い切り蹴る。バランスを崩して足から崖に落ちそうになりなんとか端の木の根を掴んだ。
「っ……く」
「……」
「!?」
足の下を見ると暗闇から大勢の人の波があたしを待っている。
「……」
剣さんはじっとあたしを見下ろしていた。
剣
「……」
遅いな
時計はすでに午後11時を指している。
そろそろ皐月が目覚める時間だと教えられて二時間が経っていた。
「……」
俺は再び紅茶に口を付けた。
皐月
「っ!?」
も……だめだ
あたしは手の力がなくなり掴んだ木の根を離し暗闇の手の波の中へと落ちて行く。