ボクらが衣替えをしないワケ【短編】
「アンタこんなに寒いのにまだ夏服なの?さてはアンタ冬でも半袖半ズボンの小学生だった?」

「いやそのくだりはもう終わった。てか自分も夏服のくせに何を言ってるかね」

「いやーまさかこれだけ寒くなってもまだ夏服で来るとは思ってなくてさー」

彼女は嬉しくてたまらないらしく、照れ隠しがバレバレだ。

しかしボクは夏服で居続ける理由を教えて貰えてないから手放しでは喜べない。

なので抗議の気持ちを込めて彼女の目を見てやや強めに言ってやった。

「見損なうな。約束は守る」

「あ、うん。ゴメン、アリガト」

途端に彼女はしおれてしまい、余りの変化にボク大慌てである。

うつむいてしまった彼女に何と言えばいいのか軽くパニクっていたら、そこにさっきボクを囃し立てていた彼から声がかかった。

「なんつーか冬服ばっかの中でお前らだけ夏服だと、まるで『ペアルック』みたいだな」

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