千年樹
全く人がいなくなったその場所には一本の大きな木があるだけだった。
どこかで見たことがある、俺は不意にそう感じた。
「……まだ、あった…」
ぽつりと言葉を放す女の子に俺は目が離せない。
何故だ。
何故リンクする。
何故――…、あの日の声と今の女の子の…、彼女の声がリンクする。
さっきまでは、何も感じなかったのに……。
「春様――…」
「っ」
「まだ、思い出してくれないんですね? 私は、もう、もうっ」
「っ、ヤメロ…」
「私は、何年も待ったっていうのにっ!」
「ヤメロ―――っ…」
奥深く埋まっていた、記憶というなの、思い出が溢れてくる。
そうだった、彼女の名は――…。
「の、和花…」
そう呼んだ途端、激しい頭痛がする。
意識が朦朧とする。