千年樹
壱
それは、何年も何年も前に遡る。
「和花………」
「春様…」
「の、どか……」
「っ…」
「のどか…っ」
布擦れの音が、部屋に響く。
彼女は透明で、触れたら直ぐに消えてしまいそうな声を出す。
その声をもっと聞かせてほしい。
もっと、もっともっと。
聞いていたい。
そして、その柔らかい白磁の肌に触れていたい。
「和花……」
「しゅっ、しゅん、さまっ」
「……和花。愛してる」
「っ。私も、愛して、ます……あっ」
甲高い声を出して、絶え絶えに息を吐く和花。
その姿に愛しさが募る。