千年樹
それは冬のある朝に起こった。
「春ー? 朝よ。早く起きなさっっ!? 春っ!!」
母親の声が耳に届き、体を起こそうとしたときだった。
「っ!? 痛っ」
「春! しゅ――…」
がんがんとする激しい頭痛と共に、俺はベットの上にうずくまり段々と霞んでいく意識を手放した。
正直、死ぬんじゃないかと思った。
けれど俺は数日の入院ですぐに退院した。
それからだ、俺の中で渦巻く違和感。
誰かが、俺を呼んでいる――…。
透明で澄み渡るような声で「春様」と。