泣かない家族

祖父の葬儀の時に初めて母の『姉』という人に会った。


祖母の方の娘には祖母の葬儀の時に会っていた。あたしは小さかったしよくわからなかったけど、祖母や母に似た顔の優しそうな人で「キョウコおばさん」と呼んで一緒に何かを作った様な記憶がある。

キョウコさんは祖母が死んで数年後まだ40代の若さで乳がんで亡くなった。



大人になって会った母の『姉』にみんなどう接していいかわからなかった。

東京から来た『姉』をホテル業界で働いていたあたしは会社のコネでホテルを取り、ホテルまで車で送った。

少し変わった人で、車を走らせている最中に「ハルちゃん、ちょっと停めて」と無理難題を言ったりする人だ。

来た道を戻って停めると外へ出て「変わったわね・・・」と呟いた。

若い頃、札幌で働いていた事があって街中の様子を見て変貌と時が過ぎたのを思っていた様だった。


キョウコさんと違うのは母はキョウコさんを「キョウコ姉ちゃん」と呼んでいたし、キョウコさんも母を「信子」と呼んでいたけど、この『姉』は母を「信子さん」と呼んでいた。他はみんな呼び捨てなのに母だけを「さん」付けしていた。

母も『姉』を「はっちゃん」と距離がある呼び方をしていた。

あたしは彼女をどう呼んでいいかわからず「はっちゃんおばさん」という奇妙な呼び方をした。


< 10 / 203 >

この作品をシェア

pagetop