泣かない家族
夜の12時を過ぎても母は寝なかった。
少しでも寝ないと益々体力が落ちる。
最初は「寝なさい」と説得してたけど無駄だとわかって言うのをやめた。
「寝ないなら少し話しをしようか?あたしが勝手に喋るから聞いててね?」
母はあたしの腕に手をかけたまま頷いた。
「あたしさ、学生の頃はクソ生意気でお母さんとよく喧嘩してたじゃない?ウチは厳しい家庭だと思う。お父さんは稼いでるはずなのに結構貧乏だったし、身内の事でお金使ってたからだよね?でも、狭い家に家族4人押し込まれるように寝てたから仲良くなったんじゃないかな?」
「そ・・・だね」
「そんな生意気なあたしは親孝行したいワケさ、あたし自身もお金ないからさ、どっかに旅行とかは連れていけないけど、お母さんが自慢出来るものは2つ叶えたつもり。書道師範と携帯小説が編集部からオススメされたって事。子供の頃から作家になりたかったし習字の先生にもなりたかった。習字の先生の夢は叶ったから後は作家だよね?難しいけどいつか書籍になりたいな。お母さんを喜ばせる為にも」
「小説、すごいね、努力、したからだよ?だから、ハルの努力、編集部、見てたんだと思う。いつか、本になったら読むから」
「まだまだ先の話だからちゃんと読める様に回復してよね」
あたしは母のやせ細った手を握った。