泣かない家族

「お前が寝てどうすんだよ、バーカ」


午前中にきた兄があたしに呆れて言った。



「いや、本当に面目ないです」


「オレや父さんは一睡もしないでいるのに。千羽鶴も全然出来てねーじゃん」


「ですね。これから面会時間終わるまでいるからそれまでに折るから」


「ま、寝てたから鶴だけは折って帰れよ?母さんがお前にだけ寝ろっていう気持ちもわかるけど。お前の身体優先したんだろうから」



兄に散々嫌味を言われてフリースペースでお茶を飲みながら1人で千羽鶴を折っていると、いつも来てくれるおばさんに声を掛けられた。


「あら、付き添いはじめたの?3人なんでしょ?大丈夫?」



「うん。だってウチは3人しかいないから。親戚はあてにしてないし。お母さんの容態の話をしたら来る様にはなったけどね」



「でも3人じゃ限界くるんじゃない?大丈夫?」



「なんとか限界まで頑張る。ダメそうだったら考える」



「ハルちゃんは自分の身体の事も考えなさいね」


「ありがとう」と答えるとおばさんは病室へ姿を消した。




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