泣かない家族
元の得意先の人に電話をしてあたしは無理難題を言った。
「安くしかも急いで1人でいいからドレスを着て写真を撮りたい」。
「はぁ?」と最初は言われたけど、母の状況を説明した。
一番親しいホテルの従業員だったのにもう違う仕事に就いていてタイミングが悪かった。
「何とかならないかな?しかも5万とかで。1枚でいいの写真なんて。最悪デジカメでもいい。ドレスだけ着させてくれたら美容室でヘアメイクしてくるから」
「そういう事なら・・・でも1人で撮るの?彼氏も一緒に撮ればいいじゃん」
「だからウチのお母さん彼氏の事大嫌いなんだって。どうしようかな?ウエディングフェアやっててふざけて着てみたって言うかな・・・それが一番無難だよね?」
「当ってみるけど、今フェアってあんまりやってない時期だよ?それに○○ちゃんお母さんの事で大変じゃん。大丈夫なの?」
「忙しいからドレス着れますってわかった時点で適当に決めて写真撮っちゃう。どんなのでもいいからドレス着てりゃいいんだから」
「わかった。急いで探すけど少し時間もらうけどいいかな?」
「うん。でも今月中じゃないと無理。来月になったら・・・間に合わないから」
「わかった。明日から当ってみるから」
電話を切って(頼むよ)と祈りを込めた。