泣かない家族
母は誰かが声をかけないと天井を睨む様に目を閉じようとしないで胸で短く息をしていた。
誰かが声をかけたらそっちを見て酸素マスクを外せと指示をする。
それでもあたしも父も笑顔で接していた。
昨日、母は一睡もしていないと兄が言っていた。
「疲れてるから少し寝たら?」
そう声を掛けても首を振った。
「そっか、じゃあ眠くなったら寝るんだよ?疲れてるんだから」
看護士が足を高くする為に母の足を動かした。
「痛い!!」
その時だけハッキリ声を出した。
褥瘡(じょくそう)に触れたワケではないのに足に触るだけで痛かったらしい。
「ごめんごめん」
看護士が笑顔で謝ったけど母は不機嫌だった。
今日は大変になりそうだな・・・
何だかそう思った。