泣かない家族
2010年1月5日。
北大を訪れると明るい雰囲気で光がいっぱい差し込んでいた。
スターバックスがあって、患者も見舞客もそこでコーヒーを飲んでいて和やかに見える。
兄は仕事で来れなくて、ストレッチャーで運ばれる母にあたしは
「大丈夫だよ。頑張って」
と笑顔で言った。
「はいよ、じゃあ頑張ってくるね」
バイバイと手を振りながら母は手術室へ消えた。
母を見送った後、父と無言になった。
手術室の前の椅子に並んで座っていたけど、父はため息をついてから
「タバコ吸ってくるわ」
と席を立った。
あたしはぼんやりと壁にもたれて時計をずーっと見ていた。
そう長い時間の手術ではない。せいぜい3時間程度だ。
バッグの中に入っている小説でも読もうかな、とも思ったけど、内容が頭に入らない気がして本を手にしたままボーっとしていた。
父が戻って来ると「あたしもタバコ」と逆にあたしが席を立った。
「寒いからな」と父は言って、あたし同様にぼんやりと椅子に座った。