泣かない家族
「住めば都」。
札幌の生活にすっかり慣れたあたしは相変わらず遊びほうけてた。
バイト代は電話代と遊びに消えて、何の為にバイトをしてるんだかわからない。
朝まで遊んでそのまま友達をウチへ連れて来て朝っぱらから怒られた事もある。
「もー、何考えてるかわかんないよ!」
母のファイルの数はどんどん増える。
あたしが何故、こんなに遊んでいたかと言えば実に下らない理由。
『今がよければそれでいい』
成人して落ち着くまでずーっとそう思っていた。
今は全く思えないし、遊びに行くのが億劫なくらいだから人間は変わる事が出来るんだと証明出来る。
この頃のあたしは健康そのもので、悩みは恋愛くらいなモノだった。
高校の進路相談の時、あたしの担任はまだ若い男だった。
元々進学希望だったあたしは専門学校へ行こうとしていし、担任もそうだと思って話をしていたのに、母は三者面談で担任にピシャリと言い放った。
「娘は大学受験させますので、あなたには関係ない。資料と願書だけ用意して下さい」
あたしも担任も唖然となったけど、母は「それでは」と席を立ってしまった。
母はあたし達兄妹に大学に行ってもらいたかった。
もう専門学校へ進学していた兄にさえ、センター試験を受けさせた。
なぜ母が大学にこだわったのかはわからない。
高卒の両親だけど、父は「一流」と言われる企業でそれなりの立場へ出世をし続けていたし、母も結婚して兄を妊娠するまでそれなりの会社で事務員をしていた。
だからそのこだわりは今でもあたしの中では謎だ。
担任にあたしは「お母さんは厳しくて怖い」と言われた。
人からはそう見えるのか、やっぱりウチは厳しいのかと思った。
何とか短大に滑り込みで合格した時、母はものすごく嬉しそうでご馳走を沢山作ってくれた。