泣かない家族

お盆に彼氏の実家に行く前に旭川の墓参りに一緒に行った。

この時、あたしは仕事を辞めていて新しい仕事を探していた。


髪の毛のかなり伸びたけど真っ白だから相変わらず母は帽子を被っていた。


父と母の故郷の旭川の墓参りに行くのは毎年の行事。

あたしが一緒に行くのは何年振りだろうか。


お盆には胃が痛すぎてほとんどろくに食事を取れていなかった母だけど「ラーメンが食べたい」と言っていた。

母はラーメンが大好きだった。

旭川ラーメンは独特で受け付けない人もいるけど、あたし達家族は大好きだった。


「天金」という有名なラーメン屋に入り3人でラーメンを食べた。


ずっと食べ物を残していた母が珍しく完食した。


あたしと父がタバコを吸っていると「1本ちょうだい」と言って父のタバコをゆっくり吸っていた。


最近は夜中にこっそりタバコを吸う姿すら見なくなっていた。


「今日は調子よさそうだね」


あたしが言うと頷いて笑顔だった。


「ラーメン美味しかった」


完食出来て良かったな、と思ってあたしは母を見ていた。

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