泣かない家族

母の友人が帰った後、病室で母はあたしの契約書を見ながら


「やっぱりハルのキャリアにしては安いよ、辞めたら?ここで働くの」


と言った。


「うーん、病院からストップかかったら辞めるしかないから様子見だね。でも採用してくれる所なんて本当にないんだから」


契約書をしまいながら笑ってしまった。


もうすぐ夕方になろうとしていた。

6時すぎには父が顔を出すだろうから、そしたらあたしは家に帰る。


「○○さん、CTの結果なんだけど・・・娘さんかな?」


内科の医者が顔を出してあたしを見た。


「はい。母がお世話になっております」


頭を下げると「娘さんか・・・成人はしてるよね?」と聞いてきた。


「はい」と言うと、「じゃあ娘さんに同席してもらうかな?いいかな?」と言われて母と顔を見合わせた。


「わかりました」席を立ってカバンを持って診察室へ向かった。


時計を見るとまだ5時で父が来るには1時間も早い。


家族も呼ばれるって何だろう・・・?



さっきの母の友人の言葉を思い出した。


「転移してる」「どんな事があってもしっかりね」



まさか・・・・


そんな事ないよね?


でも同席って何か嫌だ。


嫌な予感がしながら診察室で母と並んで座った。

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