泣かない家族
彼氏が出来たと伝えたら母はテーブルに突っ伏して大泣きした。
あたしの彼氏はバツ1の函館時代の同級生だった。
母の家庭は環境が悪かった。
母と妹弟の仲はすごく良かった。あたしの祖母、つまり母親を若くに亡くしているから長女の母をみんな自分の親の様に慕っていたし、頼りにしていた。
頼られるのが好きな人ではあるから、母は何か問題があると最終決断をいつも自分がしていた。
あたしの母方の祖父母は再婚同士の夫婦だった。
母が宿って結婚したから、今で言う出来婚になる。
祖父母にはそれぞれ娘がいて、母には半分血の繋がった姉が2人いる事になる。
そういう家庭環境だったから、離婚歴のある男性とあたしが付き合う事を許せなかったらしい。
彼氏はあたしと結婚したいと言っていた。
それを伝えるとまた泣きながら「許さない」と言った。
父は反対しないだろうと思っていたのに父にまで反対された。
認めてほしくて会ってもらいたくてあたしは何度も母を説得した。
でも母は頑に会おうとはしなかった。
顔を合わせば喧嘩ばかりで、あたしも母が鬱陶しくなり一人暮らしの彼氏の家にいる事が多くなり、気が付けば同棲を始めていた。
その頃兄も結婚をする女性と同棲をしていて、それは普通に認めていたから何も言われずにいた。
旭川方面へずっと単身赴任中の父。
同棲をし始めた子供。
母のそばには誰もいなく、愛犬だけが残った。
愛犬を母は自分の子供の様に可愛がり大事にしていた。
たまに来る母の妹が母にとって唯一の存在になろうとしていた。
あたしも出て行くなら完全に家から離れればいいのに、どこか罪悪感と認めてもらいたくて月のうち1週間は実家へ戻っていた。
でも戻れば喧嘩になるからうんざりして彼氏との家へ帰る。
その生活が母が亡くなる少し前までずっと続いていた。