泣かない家族
家に帰ると父がビールを飲んでいた。
「お、遅かったな」
「兄ちゃんと会ったからね」
「ユウヤと?珍しいな」
テーブルに座るとココロが「お帰り」とばかりにくっついてきた。
「セカンド・オピニオンも免疫療法もなかなか見つからないんだってね」
「まぁな」
父はこの日会社を早退して夕方まで病院にいたらしい。
最近、父は仕事を休んだり早退したりを繰り返している。
有休は腐るほどあるから会社に了承はもらっている様だった。
あたしはさっき兄に聞いた疑問を父に聞く事にした。
誰が見ても母はどんどん衰弱していっている。
「ねぇ、お父さん聞きたいんだけど。あたし平気だから正直に答えてほしい」
「何が?」
ビールを片手に父は振り返った。
「お母さん、あとどのくらい生きられる?長くないよね?」