泣かない家族
母の妹や弟がたまに顔を出す。
1ヶ月ですっかり変わり果てた母を見て涙を流す。
「どうして?」と母の手を握る。
泣くのは正直やめてほしかった。
言わなくても、母本人以外は誰がみても悪化しているのはわかる事だ。
泣いて異変に母が気付いたら困る。
それがキッカケで生きる事を諦めたら困る。
「そんな泣く事かい、私は元気だよ」
母は呆れて言っていた。
「何かしてほしい事ある?」
母の妹弟、つまり叔父や叔母は口を揃えて言っていた。
「何もないよ、大丈夫だから泣かないでよ。恥ずかしい」
あたしや父や兄はそれを黙って見ていた。
あたしは叔父や叔母が来る時は我関せずで本を読んでいるか、外にタバコを吸いに行っていた。
姉弟でも話だってあるだろうし、何よりも悲観的なその態度が嫌だった。
叔父や叔母達の事があんなに大好きだったのに、同じ市内にいても滅多に顔を出さない事に正直怒りさえ感じていた。
散々世話になったくせにいざとなるとそうなの?と不信感もあった。
誰だって衰弱していく大事な人を見たくない。
それはわかっているつもりだった。
でもあまりにも目につくくらい姿を現さないその状況がただ苛つかせる。
だからあんまり顔を合わせたくない。
兄嫁はお腹が大きいからあたし達3人で母をずっと看病すると決めていた。
誰もあてに何かしない。
そう思っていたら意外な人物が毎日来てくれるようになった。