綺麗な百合にも棘がある
怒った所など見たことなかった。いつでも夏妃は優しかったから。

ショックはジワジワやってきた。自分の半身だと思っていた夏妃に家族という関係を全否定されたことがショックだった。

失意のままマンションを出ると、入り口の前でタバコを吸っている古賀がいた。

「姉ちゃんに怒鳴られたか?」

「え…」

図星を突かれて返す言葉がなかった。

「図星か。まぁ先生の態度を見たらそんな感じだと思ってたけど。久々の対面で弟がへこむ程、嫌いか…検討違いだったかな」

古賀が言っている意味が春緋には分からなかった。

「あの…何言ってるんですか」

「オレ、お前の姉ちゃんが好きなんだ。なかなかお近づきになれないんで、滝川先生のとこに那津木先生にそっくりなお前がいたから、先生にそれとなく聞いたら弟がいるって言うから、これはお近づきの駒になるって思って、編集長に推薦したんだがな」
< 21 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop