ユリの花
それからしばらくして。
カツンカツンと窓を叩く音がした。
いつの間にか随分時間がたっていたようだ。ランプをつけていない部屋は暗い。
窓にそろそろと歩み寄ると小石がガラスを叩いた。不思議に思って窓を開け、下を見るとシュリとタロウがいた。
「ユリ様! 行きましょう」
シュリの明るい声が静かな裏庭に響く。
いつも聞く冷たい、かしこまった声ではない。明るい弾んだような声に思わず声がつまる。
「な、何?」
「さあ、急いで」
「ここ2階」
「大丈夫ですよ、ディーン・・・」
「了解、了解」
タロウが手を挙げると私の体は浮き、窓の外へと運ばれた。そしてふたりの元にゆっくりと下ろされる。
「どこに行くのよ? 宮殿には行かないからね」
シュリは地面に足をつけた私の手を自然にとった。
「大丈夫ですよ。私とピクニックに行くんです」
「夜だけど」
「構いません。セーラさんにお弁当も作っていただいたんです」
「ちょ、ちょっと。まさかあんたとふたりで?」
「はい。ディーンは仕事があるので」
「ユリ、シュリと出掛けてこい。お前言ってただろ。もっと遠くに行ってみたいって」
「言ったけど・・・」
「じゃあ、俺は仕事があるんでな」
タロウはそう言うとさっさと神殿の方に歩いて行ってしまった。気まずさに顔をそむけていると、シュリはこちらに、と言い歩き出す。仕方なくそれについて行くと門の前に白い馬が繋がれていた。
カツンカツンと窓を叩く音がした。
いつの間にか随分時間がたっていたようだ。ランプをつけていない部屋は暗い。
窓にそろそろと歩み寄ると小石がガラスを叩いた。不思議に思って窓を開け、下を見るとシュリとタロウがいた。
「ユリ様! 行きましょう」
シュリの明るい声が静かな裏庭に響く。
いつも聞く冷たい、かしこまった声ではない。明るい弾んだような声に思わず声がつまる。
「な、何?」
「さあ、急いで」
「ここ2階」
「大丈夫ですよ、ディーン・・・」
「了解、了解」
タロウが手を挙げると私の体は浮き、窓の外へと運ばれた。そしてふたりの元にゆっくりと下ろされる。
「どこに行くのよ? 宮殿には行かないからね」
シュリは地面に足をつけた私の手を自然にとった。
「大丈夫ですよ。私とピクニックに行くんです」
「夜だけど」
「構いません。セーラさんにお弁当も作っていただいたんです」
「ちょ、ちょっと。まさかあんたとふたりで?」
「はい。ディーンは仕事があるので」
「ユリ、シュリと出掛けてこい。お前言ってただろ。もっと遠くに行ってみたいって」
「言ったけど・・・」
「じゃあ、俺は仕事があるんでな」
タロウはそう言うとさっさと神殿の方に歩いて行ってしまった。気まずさに顔をそむけていると、シュリはこちらに、と言い歩き出す。仕方なくそれについて行くと門の前に白い馬が繋がれていた。