I wanna be your only lover
えぇっ、と驚いた淳さんが言った。
「まじで!?そっかぁ~じゃああいつがっかりするだろな~」
あいつ…?
誰だろう、なんて考えてなかった。
でもあの人だったらいいな、なんて思う自分にはふたをした。
「あいつって?」
努めて冷静に、冷静に。
さっきから無駄にうるさい心臓に言い聞かせて言う。
「ん~、俺が言ったって内緒だよ?」
はいと答えて返事を待つ。
言ってほしい人はただひとりだった。
「卓だよ~、あいつ面食いだよなぁ」
…泣きたかった。
なんで?
やめてよ、私には大切な大切な彼がいるんだから。
期待しておきながら勝手だろうか。
でも泣きたい理由はそれだけじゃなかった。
…嬉しい、なんて思っちゃいけないのにね。
どうしたの?と淳さんが顔を覗きこむ。
笑顔で何でもないと言ったけれど、ばれなかったか心配だった。
この気持ちにふたはできないとわかってしまった以上、
あたしにできるのはできる限り隠すことだけだと思ったから。
飲み会はまだまだ盛り上がっているけれど、
頭が痛いからと言ってあたしはアパートに帰った。